風景の端材を採取し、もう一つの渋谷を描き出す
渋谷の無意識に見落としている風景を採取
渋谷ストリームのイベント「SHIBUYA SLOW STREAM」に参加。
SHIBUYA SLOW STREAM
今回は変化が止まらない渋谷の風景に着眼。普段はスマホ歩きなどをしていて無意識に見落としている景色を採取。それらをパーツ化し、コラージュすることでもう一つの渋谷を描き出す実験を行った。
右の画像は採取した風景の一部。
渋谷ストリームは、喧騒的な渋谷と、落ち着いた空気の流れる代官山の間にあることが特徴である。その空気感の違いに意識しながら、渋谷ストリーム内での採取と、それぞれの方面での採取を試みた。
Parallel Collage
今回の作品タイトルは「Parallel Collage / Shibuya」。ポストカードに渋谷の風景をパーツ化したシールを貼り合わせることで、もう一つの渋谷を描き出す実験となっている。
ポストカードサイズにしたのにはいくつかの理由がある
1、お土産にできるサイズ
→ これは渋谷らしいお土産が実は渋谷には少ないことに由来
2、体験後に誰かに送る
→ ポストカードにすることで、旅行者は友人にこのポストカードを送ったり、渋谷に住む人は未来の自分に送ることも想定。今の渋谷を他者に届ける行為も含めて作品化。
3、屋外体験としての体験時間の簡略化
→ 屋外で体験を行う上で、1人あたりの体験時間のコントロールはとても重要になる。早い人は5分、時間をかける人でも15分程度の体験になるように設計することが重要。
これらをイメージしながら体験設計を考えていった。
カラーとモノクロで選ぶ基準が異なる
今回はコラージュのパーツとしてカラー版とモノクロ版を用意した。この実験を通して面白かったことの1つは、それぞれで選ぶ基準が異なった点である。
カラー版では、人は色合わせを意識し、同系統の色を集める人もいれば、なるべくカラフルにまとめようと考える人もいた。
モノクロ版では情報がより制限されるため、形状で選ぶ人もいれば、パーツの中に書かれた文字の意味で選ぶ人もいた。モノクロ版の方が、よりストーリー性を重視した選び方をしているように見受けられたのがユニークだった。
また、コラージュ作品を制作するという目的のためにパーツ(風景の一部)を見る時間は、街中ではなかなか行わないイレギュラーな時間体験だったと思う。「ここはどこだ?」、「○○通りのあれじゃないか」などの言葉が行き交い、渋谷という街を再認識するきっかけになったのではないかと思う。
パーツの元になった風景をTシャツで展示
パーツの元になった風景があることで、体験者の理解がより深まると考えたが、渋谷という街の中で、しかも屋外展示という条件の中で額縁に入れた写真展示は合わない気がした。
そこでファッションの街、渋谷らしくT シャツに印刷を行うことで風景写真の展示ができないかと考えた。Tシャツが並ぶ風景を創ることで、マルシェのような雰囲気となり、近寄り難いアートプロジェクトブースの雰囲気とは異なる空気感を演出できたのではないかと思う。
これらのTシャツは販売も行なったが、観光客に購入して頂いたのは想定内だったが、その中でも外国人比率が高かったのが渋谷の街らしい特徴だと感じた。その他にずっと渋谷で生活してきたイケメンおじさんにも購入してもらったのだが、その方との会話を通して、渋谷に関連付けが難しそうなシビックプライドの醸成にも繋がるのだなという気づきもあった。
また、ワークショップ自体を有料化せずとも、アイテム販売を同時並行することでの収益化の仕組みの可能性についても検証することが出来た。
今回の新たな試みの1つとして体験してくれた人たちの作品をインスタグラム上にアーカイブした。
これによって、デジタル上にログが残り作品を共有し合うことが、体験者同士のリレーショナルな関係が創れたと感じている。
最後に、お声がけ頂いた渋谷ストリームさま、Camp Inc.さま、ディレクターの熊井さま、イベントに一緒に参加した飯田誠二(鉄彫刻家)さん、勝亦丸山建築計画さん、皆様お疲れ様でした!
文章 : 山野恭稔