Palab parallel laboratory

SOCIALWORK
#022 京都
date:2024.11.01

京都の大工のハザイNazuna 京都 東本願寺

テーマは大工

世界最大級の木造山門 「御影堂門」 などを有する東本願寺は、世界でも有数の木造建築である。

その東本願寺を眼前に望む Nazuna 京都 東本願寺 のテーマは、木造建築に欠かせない 【大工】。 アートワークのテーマも【大工】とし、作品を通して道具や技術、技巧に触れる体験を提供している。 作品を通して大工の魅力を肌で感じ、眼前の東本願寺をより深く味わうことができ、 東本願寺での時間を経て、作品の意図を汲み取ることができる、

地域の象徴との相互関係によって滞在時間が鮮やかになるアートワークとなっている。

来訪者をテーマの世界観に誘うアートワーク

エントランスに本施設のテーマを直感的に感じられる作品を展示。

京都で採取した現代では使われなくなった道具などをフレーミングすることで、それぞれの道具のオブジェとしての存在感を引き立たせている。これら道具から生まれる木造建築への興味、大工への尊敬を思わせる作品に仕立てた。

フレームには京町家で使用されていた箪笥の引き出しを使用しており、各道具のボリュームに適するものを吟味して選別している。

Specimen of "DAIKU" Tools

京町家の欄間のハザイ 1

欄間の再解釈。

日本の彫刻欄間とは職人が立体的な模様や図案を掘り出した装飾品のこと。これをよく観察すると細部に技巧が施されていることがわかる。

本作では、京町家で使用されていた欄間を複数採取し、その中でも場の持つエネルギーと親和性の高い箇所をピンポイントでトリミング。また、円形のフレームを組み合わせることでシンボルマークのような象徴性を高め、同時に全体を黒に染め上げることで建築との統一性を生み出した。

Koushi clipping

京町家の欄間のハザイ 2

彫刻欄間と筬欄間(おさらんま)を重ねフレーミングした作品。

筬欄間は、細い桟を縦に細かく配した欄間の一種で、その繊細さから格式の高い和の建築で使用されることが多く、眼前の東本願寺でも確認することができる。本作では、手前のレイヤーに筬欄間を使用することで、奥の彫刻欄間が見え隠れする構造となっており、鑑賞者は作品の前を行ったり来たりすることで、見え方の変化を感じることができる。

全体を見ることができない曖昧な様相を醸す本作は、日本の空間が持つ奥性を表現している。

重欄間 Kasane-ranma

京町家の欄間のハザイ 3

彫刻欄間の一部を切り取り、それを現代的な盆栽として再構築。

一連の風景の彫刻から松だけを取り出すことによって予期せぬ偶発的な美しいフォルムが現れた。台座はMDFを鉢植えに見立てて構成。過去と現在の調和を象徴した新たな物語を想起させる作品。

欄松 Ranmatsu

襖の引手のハザイ

襖の引手は和の空間において最小の技巧であると言っても過言ではなく、その多様性には目を見張るものがある。

本作では京町家で使用されていた襖引手を採取し、盤面に埋め込み標本のように設えることで、それぞれの特徴を並列して鑑賞できるようにした。鑑賞者は本作に触れることで、東本願寺をはじめとする和の建築の細部への興味が養われ、それにより建築を愉しむ視点が新たに1つ付与される。

Specimen of "FUSUMA Handles"

東本願寺の見逃されがちな部分(ハザイ)を切り取る

東本願寺で普段は気に留めないが、よく観察すると魅力的な天井や建築の側面、細かい装飾などの一部を写真として採取し、時に拡大表現を施すことでグラフィック作品として成立させた。

本作に触れ内容を理解することで、鑑賞者は東本願寺を観察する新たな視点を得ることができ、木造建築としての深い魅力を体感することができるようになる。

Hidden "HIGASHI HONGANJI"

建築部材のハザイを花器に

柱の花器

本施設の解体時に採取した柱を加工し花器の仕立てた。詳細を観察すると、木材に刻まれた溝の違いなど大工の手仕事に触れることができる。


襖の花器

本施設の解体時に採取した襖のパーツを複数組み合わせて花器の仕立てた。詳細を観察すると、線の繊細さや漆の表情など大工の手仕事に触れることができる。

床の間の設え

床の間は和室における精神的支柱である。そこで本施設の床の間には大工の道具を掛け軸のスケール感を模倣した板に設えることで、宿のテーマを伝えることを目指した。



今回のアートワークを通して、欄間という同じ素材でもアイデア次第で多様な変化をつくることができることを実証実験できたのではないかと思う。また、テーマ設定を持った一貫性のあるアートワークは施設の魅力度を高められたのではないか。

大工の魅力を感じ、その先に東本願寺への興味が湧き、実際に足を運んで京都の魅力の1つを感じてもらえる人が増えると嬉しい。


文章 : ヤマノ タカトシ

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