大きな工場から出る端材の可能性Ricoh 環境事業開発センター - Ricohの端材からみえたもうひとつの世界 -
入口で出迎える「絶滅危惧種」の大きな動物
静岡県の御殿場にある株式会社リコーの環境事業センターリニューアルオープンのためのアートワーク制作です。この大きな工場から出る端材を使い、リコーならではの作品を制作する試みになります。工場見学も定期的に行うとのことで、作品を通した解説も出来るように物語性も検討しました。
メインエントランスでは、御殿場地域の絶滅危惧種である大きな動物をモチーフに、LANケーブルの端材で作品制作を行いました。この作品は、当センターの環境配慮が創り出す生物との共存社会の象徴して、従業員にも来訪者にも親しまれるアイコンとして機能しています。
大きな踊り場に現われた「雲」
わたしたちが工場見学を行った際に興味を惹かれた端材のひとつが「感光体ユニットの袋」でした。この素材は中の感光体ユニットを日光などから守るため反射素材になっており、そのシルバーの質感は可能性を感じさせるものでした。観察・実験の結果、この端材は熱で伸縮することがわかり、日光が入る踊り場での設置だったことから、光を乱反射させるため、捻りを加えながら熱加工をほどこし、多面体にすることを試みました。その結果、雲のようなボリュームでキラキラとした象徴的なボリュームをつくることができました。初見の人はこの素材が何なのかわからず、廃棄される予定の袋であったことを知ると、驚かれると同時に『もったいない』と言います。この『もったいない』が引き出せたとき、わたしたちの取組による価値変換が少しは成功したかなと感じます。この袋は今まで業務の中で自然に廃棄されていたものなので。
創造を掻き立てる、小さな世界
学童向けの工場案内も定期的に行われるとのことで、子供の創造を掻き立てるような作品を制作しました。それが「parallel packing world」です。素材はプリンターなど機材類を梱包する発泡スチロールの端材で、多種多様な機材を扱うリコーでは、その数に応じた発泡スチロールがあることに気付きました。また、発泡スチロールには組立の際に必要とされることで記されたのであろう「謎の文字」や「記号」が刻印されており、ここに面白みを感じました。そこで、この謎の文字や記号、形状には別世界では意味があり、それらを基に作られるコミュニティーがあるのではと仮定し、模型用フィギュアを使って、架空の世界を描くことを試みました。
文章 : 山野恭稔